事故の責任を負って船おりた航海士と、彼が弟のように可愛がる若い港湾労務者とのボクシングをめぐって展開される男の友情物語。 船員を乗せた小舟 ― 艀(はしけ)の舵をとる岩佐英次は元は外国航路の航海士だったが、一年前事故の責任をとって船を下りた。艀から上がった英次を東洋公司の社員・近藤が待っていた。「社長の劉が会いたがっている」と伝える近藤に、英次は黙って首を振った。近藤の眼に一瞬殺気が走ったが、構わずその場を去った英次は、港の近くにある貧しいボクシングジムのドアを開けた。弟のように可愛いがっている港湾労務者・田村順の試合が近づいていた。順の父は英次と同じく船に乗っていたが、一年前の事故で死んだ。幼いときに母親を失い、身寄りのなくなった順のボクサーになりたいという希望を叶えさせようと、英次は懸命だった。
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